●ギフチョウの羽化
しばらく前、春先のことです。
勤務先の揖斐川歴史民俗資料館でギフチョウが羽化しました。
館の植栽の中にギフチョウの食草であるカンアオイが植わっており、その葉を食べながら大きくなった幼虫が夏に蛹になって、年を越した今年の春先、ようやく羽化したものです。
幼虫は真っ黒で、美しくも可愛らしくもありません。
蛹も真っ黒で、猫の糞を小さくしたような感じです。
館長と二人、幼虫にカンアオイを与え、蛹になってからは、乾燥しないようにときどき霧吹きで湿り気を与え、育ててきました。
「なんで歴史民俗資料館の館長と学芸員が虫を育てているんだろうね」と苦笑しながら世話をしたものです。
とはいえ、正直言ってちゃんと羽化するかどうかは疑問でした。
子供の頃にアゲハチョウを育てて羽化させたことは何度もあるものの、ギフチョウを育てるなど初めての経験だったからです。
ですから、蛹を割って、まだ羽がくしゃくしゃの蝶が出てきたときには感動しました。
蛹になったのは10匹ほどいたのですが、羽化したのはそのうち4匹でした。
カビが生えてしまったり他の虫に食われてしまったりと、他の蝶でも蛹から成虫になれる確率はその程度のものです。
羽を伸ばした4匹の蝶は、やがて、春の日ざしの中へと飛び立ってゆきました。
その姿は春の妖精という呼び名にふさわしく、館長と二人、晴れがましいような、ちょっと寂しいような気持ちで旅立ちを見送りました。
