2010年01月08日

●恋する瞳

 いつも部屋の隅でうずくまっていて、他人と会話をすることがない。食事もほとんど食べず、手足の爪は伸び放題、子供の頃からの長い付き合いである私とも決して目を合わせようとしない・・・。
 そんな同居人がいる。
 名前を「くろ」という。今年で8歳になる我が家のオス猫だ。
 人間でいえば、典型的な引きこもりである。赤ん坊の頃は、人(猫?)一倍元気で餌もよく食べたのだが、1歳になってすぐ下部尿路疾患という病気になってから、精神を病んでしまった。幸い下部尿路疾患は治ったものの、以来7年間、冒頭のような状態が続いている。

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 そんなくろに変化が起きた。
 くろを含め、我が家に7匹いる猫のうち6匹は、通称「猫部屋」と呼んでいる6畳間に居住しているのだが、つい先日、そんな猫部屋をこのブログでおなじみのogawa嬢が訪ねてきた。秋以来、2度目の猫部屋訪問である。
 私はいつも通り、ムツゴロウさんよろしく猫たちの世話をしていたのだが、ふと見ると、いつもは隅っこにうずくまったまま動かないくろが、とことこ歩いている。おやおや、珍しいことと思う間にくろはogawa嬢に近づいていき、その足に顔をすりつけ始めた。飼い主の私にも滅多にしない親愛の行為である。
 サプライズはこれだけではなかった。くろはそのまま、座っているogawa嬢の膝に這い上がり、いかにも居心地が良さそうに座りこんでしまったではないか。
長年いっしょに暮らしてきた私やカミさん、娘にとっても、くろが膝に乗ってくることはごくごく珍しいことである。ましてや、たまさかに娘の友人などが猫部屋に入ってきても、どこかに隠れてしまうことが常だったくろが、2回しか会ったことのないogawa嬢の膝に乗ってくるなんて・・・。

 ogawa嬢に撫でられているくろの顔は夢見心地だった。いつも何かに怯えている常日頃とはまったく違う安心しきったその表情。平素は食べさせるのに苦労する食事もあっさり平らげ、さらにおかわりを要求する。これほど旺盛な食欲を見せたのは子猫の頃以来である。

 家族にも心を開かないくろに、こんな変化を起こさせてしまうogawa嬢って何者?
 そう思いながら、ogawa嬢を見つめるくろの瞳を見て私は悟った。
 キラキラ輝くつぶらな瞳・・・。それはまさしく恋する少年のものだった。

 猫が人間に恋などするものかと言う方もあるかもしれない。が、我が家で最古参の猫であるビビさんは私に恋をし続けている。長年人といっしょに住んでいる動物は、自分を人間と思っているから、当然、恋も覚えるのだ。

 恋は時として奇跡を起こす。
 7年間、引きこもりだったくろ。恋のパワーで社会復帰(?)することができるのか。

写真:子猫の頃のくろ