●新春開運?フリーきっぷで名鉄散策
「名鉄1DAYフリーきっぷ」という切符がある。正月の1日、名鉄の全線に2500円で乗り放題という切符である。これを使って小さな旅をしてきた。まだお屠蘇気分が残る正月3日のことである。
名鉄一宮駅から、まずは中部空港行き特急の人となる。いそいそと特別車に乗りこむ。名鉄特急には、座席指定の特別車と普通乗車券のみで乗れる普通車が連結されているが、「名鉄1DAYフリーきっぷ」を使うと、10時から16時までは特別車にも指定券なしで乗ることができるのである。とはいえ、その座席の指定券を持っている乗客が乗ってきた場合には、即刻、座席を明け渡さなければならないことはもちろんだ。
同行するのは、このブログでおなじみのogawa嬢。通常、名鉄に乗る機会がほとんどなく地理不案内な私のガイド役である。
晴れるという予報に反して鉛色の雲が立ちこめてはいるものの、空港特急は快調に走る。私たちの席の指定券を持った乗客も現れず、まずは上々の滑り出しだ。
快適な乗り心地を楽しむうち、中部空港駅に到着。チケットホルダーに差しこんでおいた切符を忘れて降りかけるというおバカなハプニングにやや慌てる。
飛行機に乗ることが多いogawa嬢にとっては慣れた場所だが、私は恥ずかしながら中部空港へ来たのは初めてである。開業当初に比べれば人出は減ったとのことだが、それでも観光客・見学客でなかなかの賑わいだ。
コンパクトで機能的な空港内を案内してもらい、飛行機が離着陸するようすを眺めてから軽く食事を摂る。傍らでは、ウルトラマンのショーが行なわれている。
ふたたび特急特別車の人となる。帰国ラッシュで特別車の座席確保は難しいかもしれぬと思っていたが、あっさり座れ、しかもその席の指定券を持った客は現れない。
「こりゃラッキーだね」と話していたらアナウンス。
『さきほど発生した人身事故のため、名鉄本線のダイヤは大幅に乱れています。JRへの振替輸送をご利用ください』
・・・なんだとぉ?
いやはやどうにもである。次の目的地は豊川稲荷だ。名鉄本線が不通ではJRを利用するしか方法はない。
仕方なく金山でJR東海道本線へ。見なれた車内と車窓。しかも名鉄の客がプラスになったためか混んでいる。本線の名鉄特急特別車を楽しみにしていたのに、何が悲しくていつも乗っているJRに乗らなければいけないのか。
豊橋でJR飯田線へ。当初は人身事故の当事者を呪いたい気分だった私たちだが、2両編成の飯田線列車を見たとたんに嬉しくなり、プラス思考にチェンジする。
「まぁ、人身事故がなければ飯田線に乗ることもなかったわけだから、かえって良かったのかもね」
お気楽の極みである。ま、めでたい正月、めくじらを立てるより楽しくいこうというわけで、豊川駅で下車。
豊川稲荷までの参道は人と屋台で溢れかえっている。店をひやかしながらたどり着いた豊川稲荷は、もう正月3日にもかかわらず参拝客で長蛇の列だ。
列を見たとたんに並ぶ気が失せた私たち、とりあえず列の最後尾から軽く拝んで初詣を済ませる。信仰心の薄さを物語る所業である。
JR豊川駅に隣接した名鉄豊川稲荷駅から、国府ゆきの普通列車に乗車。ダイヤの乱れは未だ続いているらしい。
とりあえず目的は達し、あとは帰るだけだが、混雑した列車に立ちんぼはできれば避けたい。国府駅では、すぐに名古屋方面ゆきの特急が接続しており、ほぼ全員が乗り換えるが、私たちだけが豊橋方面ゆきのホームへゆるゆると降りる。せっかくだから、ちゃんと座席を確保して帰りたい。そのためには、始発の豊橋まで戻った方が得策であるという考えだ。
目論見は当った。ほどなくやって来た特急は2階建てのパノラマスーパー、しかも先頭の特別車にはしっかり二人分の空席があるではないか。
名鉄に乗る機会のない私は、パノラマスーパーの先頭車に乗るのは初めてである。走り始めると、さすがにワイドな前面展望はすばらしい。パノラマスーパーの運用を今後どれほど続けていくのかわからないが、やはり名鉄の顔であり、並行するJRや他の私鉄との差別化を図ることができる唯一の車両と思われる。製造や維持にコストがかかり運用が限られるのだろうが、末永く運用してほしいし、同じコンセプトの車両を今後も作り続けて欲しいと思う。
豊橋に到着。乗ってきた特急は、すぐに名古屋方面ゆきとして折り返す。
「名鉄1DAYフリーきっぷ」で特別車に乗ることができるのは16時までである。まことに惜しいが、そろそろ16時を回る刻限だ。できれば、このまま特別車に乗っていたいが、後ろ髪を引かれる思いで特別車から普通車へ乗り換える。普通車はやや混みあっていたが、そこは旅慣れた者同士の連係プレーで難なく座席を確保、帰路につく。
新型車両にはない速度表示に子供のように喜びながら、せっかくフリーきっぷなのだからというセコイ根性で終点の岐阜まで乗車する。岐阜駅を見学後、名古屋へ折り返し軽食。
「じゃあ、帰ろうか」ということでホームに並んでいるとアナウンスが。
『沿線火災によりダイヤが乱れています。お急ぎのところまことに申し訳ございませんが・・・』
はあ?という感じである。正月早々から1日に2回のダイヤ混乱?
ちょっと勘弁してよ、と思いながら、さして遅れずに到着した列車に乗りこむ。途中、停車することもなく、無事に一宮駅着。
考えてみれば、1日に2回のダイヤ混乱に遭遇したものの、私たちの旅程が遅れたわけでもない。立っていた区間は僅かで基本的には着席できている。特別車では指定券を持った客が乗ってくることもなく、振替輸送のおかげで飯田線に乗ることもできた。
結局、いつもの観測行と同じく、運と勢いですべてをプラスに変えてしまったフリーきっぷの一日だったようである。
