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2009年10月30日

●シリウスの伴星を見た夕暮れ

前回、銀河系近傍の銀河について書いた際に、私が子供の頃には指導者がいなかったと書きました。
その通り、系統だって教えてくれる指導者はいなかったのですが、同じ市内に一人だけ天文の先輩がいて、何度かその人の家にお邪魔してはハイレベルな天文の世界を垣間見させてもらってはいました。

その人・・・Sさんは高校の天文部に所属していました。
近在ではもっとも学力の高い高校に通っていたSさんは、忙しい身でありながら気さくに小学生の相手をして下さいました。
今では名機と呼ばれている西村製作所の20㎝反射経緯台を所有しており、書棚には天文の本がぎっしり、アルバムには自分で撮った天体写真がいっぱい貼られていて、今から思い返してもレベルの高い天文ファンでした。
知的で大人びた風貌と論理的でありながら朴訥な語り口が、いかにも天文ファンであることを感じさせ、Sさんの家を訪ねるたび、憧れと感動に胸が震えたものでした。

siriusu02.jpg

Sさんの家を訪ねるのは大抵が昼間でしたが、一度だけ、夕方遅くなった際に、20㎝反射で星を見せていただいたことがあります。
季節は冬でした。
よく晴れた晩でしたので、いろいろな天体を見せていただいたのでしょうが、なぜかあまり覚えていません。
でも、ひとつだけ非常に強烈な印象で覚えているのは「シリウスの伴星」を見せていただいたことです。
シリウスの伴星といえば、主星と大変に近接していること、また主星との光度差があまりに大きいために見ることが困難な対象として知られています。
冬場でシーイングは良くなかったはずですが、シリウスを視野に入れたSさんはしばらくじっとアイピースを覗きこんだ後で、「よく見えるよ」そう言って私を振り返りました。

さほど天文知識がなかったとはいえ、シリウスの伴星が見づらいことは知っていましたから、半信半疑で視野を覗きこんだ私は、思わず小さな声で叫んでしまいました。
見えたのです。
副鏡による回折像の合間に、真っ白くぽつんと輝く小さな伴星が。

あのときの風の冷たさ、そしてキラキラと瞬く冬の星々の美しさは、今でもありありと思い出すことができます。
あれから何度か、シリウスの伴星を見たことはありますが、あのときほど明瞭に見えたことはありません。

Sさんとは、それから自然に会わなくなってしまい、久しぶりに会ったのは私が高校生になった頃でした。
「もう天文はやってないんだよ」
そう言うSさんは、それまで見せたことのない大人の顔をしていました。
やるせなさと寂しさを隠してSさんの家を辞した私は、それでもSさんこそが最初の天文の師だったのだと思い直し、やはりシリウスがキラキラと輝く冬の空を見上げたのでした。

写真:シリウス(西美濃天文台の60㎝反射望遠鏡で撮影)


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コメント

こんにちは。
お世話になります。

私の天文師匠はご存じの通り、宇宙探険家ホーキングN博士です。

ここ最近は、昨日も観てましたが、ニコン10×70双眼鏡(博士の観測用?)で観望しております...!

どおりで、まっちゃんがいつも双眼鏡片手に探索に行ってるのか納得です!

干場 一志

干場さん、こんにちは。
ホーキングN博士は、さすがに良い機材を揃えてますね。
10×70双眼鏡があれば、けっこう多くの星雲・星団が見えますから、星雲・星団もぜひ探してみて下さい。

シリウスの伴星は現在何cm位で見えるのでしょうか。私は見たことがないので、一度は見てみたいものです。オリオン座のリゲルはお気に入りの二重星、主星に寄り添うようにぽつんとある伴星の姿が、とてもかわいらしく思えます。Sさんは高校生離れした知識と機材を持っていた人ですね。子供心の憧憬が結晶化されたような夜でしたね。

Ogimotoさん、こんばんは。
シリウスの伴星、1970年前後は見やすい時期だったようです。
加えて、たまたまスパイダーの回折をうまく外れた位置にあったのでしょうね。
今は離角が小さく、相当の大口径でないと見づらい時期です。
2020年前後は見やすくなりますので、再度チャレンジしてみたいです。
本当にSさんは、当時にしては最先端の知識と機材を持っていました。
いつか、あんな天文ファンになってみたいと、子ども心に誓ったものです。

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