« 小説「Last Planetarium」1 | メイン | 小説「Last Planetarium」2 »

2008年04月27日

●随筆「樽見鉄道賛歌」

 先般、連載した児童文学「赤い電車に乗って」を読まれた方何人かから「星も好きだけど鉄道も好き」というメッセージを頂戴しました。
そこで今日は、2002年に鉄道雑誌に書いた短いエッセイを再掲。
残念ながら、一昨年からこの列車は走らなくなってしまいましたが、懐旧と惜別の念をこめて掲載です。
以下、本文です。

「樽見鉄道賛歌」

 今年も、樽見鉄道の客車列車に乗ってきた。
 樽見鉄道では、終着の樽見駅からほど近い「薄墨桜」の開花にあわせ、花見客輸送のための客車列車を運行している。今年は桜の開花が早く、私が乗車した4月中旬には、すでに散ってしまった後だったが、それだけに車内は空いており、快適な旅を満喫できた。

tarumirail1.JPG

 根尾川の渓谷と絡み合い、目の中まで染まりそうな新緑の中を列車は走る。終着間近に響く懐かしいオルゴール、黒い肩掛けカバンを提げた車掌の姿、何よりもどっしりとした客車独特の揺れ具合。青いモケットにもたれて目を閉じれば、のびやかで心豊かな昔ながらの鉄道の旅へ心は確実に還ってゆく。
 JRの幹線ですら希少価値となった客車列車が、ましてや単線の盲腸線を堂々と走行するシーンなど、樽見鉄道以外ではもはや見られないのではあるまいか。たまたま近くに住んでいるために、こうして気軽に乗りに来ることができるけれど、実のところ、僕はとんでもなく幸せな人間なのではないだろうか。車窓を過ぎてゆく水と緑の景色を眺めながらそんなことを思う。
 今年はもう運行を終えてしまったが、客車の旅を楽しみたい方は、ぜひ来年、桜ダイヤの樽見鉄道を訪れてほしい。レールのジョイントを数えるにつれ、心が柔らかくなること請け合いである。

写真:雨の樽見駅に停車中の客車列車

トラックバックURL

このエントリーのトラックバックURL:
http://at-h.net/~has/cgi-bin/mt/mt-tb.cgi/379

コメントする

(初めてのコメントの時は、コメントが表示されるためにこのブログのオーナーの承認が必要になることがあります。承認されるまでコメントは表示されませんのでしばらくお待ちください)