●揖斐川町の地誌「ウソ越え峠」
ウソ越峠という峠道がある。旧徳山村から福井県今庄町へ至る高倉林道にある峠である。
県境の秀峰、冠山へ続く国道417号線から分岐し、簡易舗装の狭い林道をたどる。
ブナやナラの緑が美しい道は次第に急峻となり、いよいよ登りつめると小広い峠にたどり着く。道はここから下りにかかり、どう見ても県境である。やれ嬉しやと思ったのも束の間、しばらく行くと再び急峻な登りが始まる。
騙されたようだが、峠であることは間違いない。ウソ越峠からは、赤谷、釈迦嶺への林道も分岐しており、越前へ下りたつもりが再び徳山へ戻ってしまったということが、昔はたびたびあったという。
狐につままれたような峠ではあるが、周囲の景観は素晴らしい。はるか遠方に冠山が望め、道谷と赤谷が山肌を深く刻みこんでいる。群生するブナやミズナラの根元を清冽な渓流が洗う。もうここで十分、福井県に下る必要なんてないよ、そんな気持ちにさせてくれる、明るく清澄な峠である。
写真:ウソ越え峠から望む冠山
