« ウチの猫紹介「キュートでポップなコチャチャさん」 | メイン | レコーディング2475フィルム »

2007年07月24日

●お勧めBOOK「太陽の簒奪者」

以前に、野尻抱介さんという作家について書きました。一昔前だったら、人類が到達し得ない技術や仮説に基づいて描かれるべきテーマや実現不可能そうに思えるプロジェクトを、わが国が現在保有する宇宙科学の最先端を駆使して無理なく描ききってしまう、日本ハードSFの旗手ともいうべき作家です。

前回は「沈黙のフライバイ」という短編集を紹介しました。
今回、読んだのは「太陽の簒奪者」という長編です。
西暦2006年、太陽を取り巻く謎のリングが形成されつつあることが発見され、日照量不足によって、地球の気候は大きく撹乱されてしまいます。
人類の滅亡が迫る中、リングを創造した異星人が太陽系に接近、リングの破壊に成功した日本人女性科学者は、戦闘を志向する国際世論に対して、異星人とのコンタクトによって事態の収拾をはかろうとするのですが・・・。

太陽を取り巻くリングという構想、原子力推進宇宙戦艦による破壊ミッションなど、まさにSFの世界を描いているにもかかわらず、西暦2006年という当初の年代設定でわかるとおり、すべてが、基本的には現代の宇宙技術で対応可能な内容となっています。
この作家の本領はここにあります。夢物語ではなく、現代日本が有する宇宙テクノロジーによって、すべてのストーリーが展開していくのです。

宇宙技術に関する広汎で膨大な知識がその作風を支えていることはもちろんですが、それ以上に、宇宙への強い憧れがこの作家にこうした作品群を書かせています。
「太陽の簒奪者」、天文が好きな方には、ぜひお勧めしたい一冊です。
もう少し長編にして書きこむと、J.P.ホーガンと並んで世界的な評価を受けるようになるのかな、という気もしますが、それはあくまで欲を言えば、の話。
ぜひぜひお読み下さいませ。
早川書房刊 本体640円 です。

トラックバックURL

このエントリーのトラックバックURL:
http://at-h.net/~has/cgi-bin/mt/mt-tb.cgi/226

コメント

私も読みました。
アイディア自体は、新しいものではありませんが、現在の科学技術内でとらえられているところが、明日にでも現実に起こりそうで、一気に読んでしまいました。人工知能の振る舞いが興味深いですね。

さすがはfurukawaさん、チェックが早いですね。やはり天文屋としては、ファンタジー仕立てや実現不可能なテクノロジーに基づいたお話よりも、現代科学の延長でとらえることができ、それでいて知的好奇心やロマンを満足させてくれるストーリーに惹かれます。
furukawaさんは「ロケットガール」シリーズはお読みになりましたか。1巻は文章がやや硬いし設定も苦しいところがありますが、3巻「私と月につきあって」は作者が楽しんで書いているだけに面白いなあと思っています。

ロケットガールは、まだ読んでいません。最近アニメになったようです(アニメも見ていませんが)。秋田大学でしたか?女子高生のロケット打ち上げプロジェクトを、ロケットガール養成講座ってのがありましたね。このドキュメンタリーを見ましたが、結構感動しました。

コメントする

(初めてのコメントの時は、コメントが表示されるためにこのブログのオーナーの承認が必要になることがあります。承認されるまでコメントは表示されませんのでしばらくお待ちください)